日立ベーシックマスター レベル3

このページは、昨年の2月に Internet Magazine にて紹介されました。


レベル3の全体像

私が最初にさわったパソコンが、このベーシックマスター・レベル3でした。
ベーシックマスター レベル3は、1980年に日立が発表したパーソナルコンピュータです. このマシンは当時、いろいろな意味で先進的でした。以下に本機の特徴を示します。 まずはこの写真をご覧ください(この画像は縮小してあります。 写真をクリックするとオリジナルの画像が表示されます。以下同様)。 見ての通り、本体はキーボード一体型になっています. ただしこのマシンは、メイン基板が大きいため、本体の奥行が大きく、モニタを 上に置くようになっています。このデザインは、apple][を意識したものである という説もあります。
当時はこのようにキーボードとメイン基板が分かれていないパソコンばかりで、 仮に離れたとしてもそれは、ワンボードマイコンにキーボードを後付けした ものでした。 現在のような本体とキーボードが分離したセパレートタイプのマシンは、 レベル3の約1年後にNECから出たPC-8801 から本格的に普及し始めます。


解剖

それでは、レベル3の本体を分解し、中を見てみることにしましょう。
これは天板を取り外したところです。手前にある箱が電源です。この容量の 大きい電源もレベル3の特徴の1つです。この状態ではメイン基板はほとんど 見えません。右側に立っている2枚の基板は、左側からそれぞれ増設RAMボード、 漢字ROMボードです。

キーボードを取り去って上から眺めると、このようになっています。 メイン基板は、本体の面積と同じ位の大きさであり、アルミとプラスチック を重ねて作られたカバーに覆われています。このカバーは、基板が発する ノイズを遮断するための物なのですが、レベル3はとにかくノイズをよく出す マシンでした。稼働中は、同じ部屋にあるテレビでNHKが全然映らなくなる ほどでした。このカバーを外して電源を入れてみたことがありますが、特に 変わりがなく、その効果は認められませんでした。
また、拡張スロットが6本あり、さらに増設RAM専用のスロットが2本 あることがこの写真から分かります。 増設スロットに装着するボードは結構豊富にありました。当時は高価だった フロッピーディスクを使うにもインターフェイスボードを用意する必要が ありましたし、その他、増設プリンタインターフェイスボード、8088CPUボード や後述の漢字ROMボード等が日立から出されました。また、家庭用ゲーム機向けの ソフトで知られるハドソンからは、Hu-Engine という、Z80CPUボードがでていました。 これは本体の6809と並行に動作するもので、最大8MバイトのRAMディスクとか、 グラフィックエンジンとか、結構すごい物だったらしいのですが、 私はまだ実物を見た事がありません。

これは漢字ROMボードです。JIS第1水準の漢字+非漢字の計3418文字が このコンパクトなボード上に収められているということで、当時としては、 画期的な集積度を誇っていました。値段は、約5万円だったと思います.

これは増設RAMボードです。これ1枚で、16Kバイトの容量があります (メガではなくキロですよ!)。しかし通常は、そのうちの8Kバイトしか 使用できません。なぜなら、拡張領域の8Kバイトを越えたところ からは、BASICインタプリタのROMと重なるからです。したがって、 ボード上のジャンパピンの設定により、後半の8Kバイトは使用不可 にしてあります。ちなみに前述の通り、増設RAM専用のスロットは2本 あるのですが、どのようにしてROMと重なる部分を使うのかは知りません。
ちなみに値段は、30,000円ほどだったと思います。現在、30,000円出せば、 64Mバイトほど用意できることから、この16年でRAMの価格は約 1/4096 に なったと言えるでしょう。

では続いて、メイン基板を眺めてみる事にしましょう。
メイン基板は、大きく重く、非常に多くの部品が載っています。 私は、初めてこれを見たとき、驚きました。今の技術をもってすれば、 この大きな基板の何百枚分の回路もワンチップに収まってしまうので しょう。

これが当時、「究極の8ビットCPU」と呼ばれた、6809です。動作クロック は、1MHzです。
ここで、おや変だなと思った方もいらっしゃるかもしれません。見ての通り、 68B09に換装しています。その昔、私は愚かだったので(今でも 十分愚かなのですが)、レベル3が倍速で動作することを期待し、 約3ヵ月分の小遣いに相当する金額をはたいて68B09を買ったのですが、 当然のように何も変わりませんでした。

これは、BASICインタプリタのROMです。3つで24Kバイト(&HA000〜&HFFFF)です。 空きソケットが見えますが、何に使うのか、どこのアドレスに対応しているのかは、 私は知りません。

これは、RAMです。おそらく、上のソケットのついた段が、モードによって VRAMにもユーザエリアにもなる部分の多い前半の16Kbye(&H0000〜&H3FFF) で、真中の列が後半の16Kbyte(&H4000〜&H7FFF)、そして下の列が、画面の 色を保持するカラーRAMだと考えられます。カラーRAMは、8ピクセル につき5ビットの色情報を保持します。5ビットとは言っても、64色出るわけでは ありません。グラフィック/テキストのフラグが1ビット、テキストの反転フラグが 1ビットで残りの3ビットが色情報となり、8色が表現できることとなります。


キーボード

ここではキーボードを簡単に見ることにします。
当時のオーソドックスなキー配列です。 テンキーの右下のキーがもげていますが、これはたしか小学生時代に、 天体望遠鏡で金星を見ていたとき、望遠鏡が突然倒れてキーボードに直撃し、 そのさいにキーがふっ飛んだのだと記憶しています。
リターンキーの形、その上のRETURNという文字、 そしてスペースキーの横になにもないという点が、 今のパソコンに慣れた目で見れば斬新なのではないでしょうか。

キーボードの左側の拡大図です。レベル3のキーボードの特徴として挙げられるのは、 まず、BREAKキーではないでしょうか。誤って押してしまわないように、 囲みがしてあります。
また、KATA HIRA というキーがありますが、これは文字通り、片仮名、平仮名 の切替えです。横のLEDが赤く点灯している時は片仮名、緑の時は平仮名、 点灯していない時が英数字の入力モードとなります。いつだったか、 月刊アスキーに、このLEDをソフトウェアで操作して、赤から滑らかに 黄色、緑に変化させるプログラムが掲載されていました。

これはキーボードの上にある扉を開けた所です。電源スイッチ、ボリューム、 モードスイッチ、リセットスイッチがあります。
モードスイッチは、起動時に画面が80*28文字か 40*25文字かを設定する ものです。この設定に従いフリーエリアの大きさも変わります。
リセットスイッチは、普通の機種の場合、コンピュータの再起動をするための ものですが、レベル3の場合はこれとは異なり、
       Abort
       Ready
と表示され、BASICのコマンドレベルに戻ります。これを使えば、マシン語の プログラムをいつでも中断でき、非常に重宝しました。 X68000 でいうと Interruptスイッチに相当すると言えます。 押している間は、カセットのリレーがonになり、テープをちょっと動かす時 にも便利です。


使ってみましょう。

これは初期画面です。使い始めた当時、わたしは小学生で、 Copyrightとか、Version,Microsoft等の意味を知らずに 使っていました。デフォルトでは、高解像度グラフィックが使用可能な モードとなり、メインメモリ上の16KバイトがVRAMとして使われます。 このため、ユーザエリアは22378バイトと少なくなっています。 RAMを増設しなければ、約14Kバイトとなります。 メモリが少ないことが、レベル3の短所の1つで、これには苦労させられました。
では次に、線を引いてみることにします。
当時これほど細かいグラフィックを扱うことができたのは、 百万円以上もするオフィスコンピュータ等は除いて、パソコンでは レベル3しかありませんでした。但し、VRAMは16Kバイトしかなく、 着色は8ドット単位でしかできませんでした。これがレベル3の最大の短所 だったのではないかと思います。この時代は、1ドット毎に独立して 着色できる仕様を「フルグラフィック」、そうでないものを「セミグラフィック」 と呼んでいました。レベル3より少し後に出た富士通のFM-8 (Fujitsu Micro 8)は、フルグラフィック仕様で、これによりレベル3の 存在感は急速に失われてしまいました。 レベル3は結局マイナーな機種のまま終ったのですが、このグラフィック仕様が その最大の理由だったと考えています。
また、画面を見ると、線の下の文字が崩れていることが分かります。 これは、グラフィックとテキストのVRAMが独立していないためで、 FM-8も同様でした。したがって、テキストをスクロールさせるとグラフィック も同時にスクロールし、しかも波打つように非常に遅く、イライラしました。 その後出たPC-8801では、テキストVRAMとグラフィックVRAM が独立しており、注目を集めました。

レベル3BASICには、システムを再起動する NEW ON コマンドがあります。 NEW ON の次に数値を指定し、例えば、15を指定すると、低解像度グラフィック のみ使用可能なモードで立上り、フリーエリアは36714bytesになります。 このモードではグラフィックの解像度は160*100ドットとなり、これは PC-8001と同じです。
私はアセンブリ言語でワープロを作ったことがありますが、 これは高解像度グラフィックを使用します。しかし、メモリが小さいため、 アセンブラとソースコード、目的プログラムが入り切らなかったので、 ソースコードの編集やアセンブルをするために、低解像度モードで起動し、 カセットテープからアセンブラ、ソースをロードし、ソースを修正し、 アセンブルして、ソースと目的プログラムをカセットにセーブし、 高解像度モードで再起動し、目的プログラムをカセットからロードして 実行するということを繰り返していました。よって、 プログラムを1箇所修正して実行するのに20分以上かかりました。

先に述べたように、レベル3の特徴として平仮名の表示が可能であることが 挙げられます。画面を見ればお分かりかと思いますが、英数字が 8*8ドットで構成されているのに対し、平仮名に限って、その倍の 8*16ドットで構成され、滑らかな曲線を表現しています。 平仮名を表示することによって、我々は、PC-8801やPC-9801よりも 一足早く、640*400ドットの世界を体験することができたのです。 この細かさを実現するために、画面の表示をインターレース方式で 行い、そして専用カラーディスプレイには超長残光ブラウン管が用いられました。

ノンインターレースモードにすると、平仮名が表示できなくなる 代わりに、このような「グラフィック文字」を表示できるようになります。 当時の代表的な機種、PC-8001やFM-8等と同等です。

最後に、VRAMの構造について見てみることにします。 高解像度モードを前提とします。 VRAMは、&H0400 から始まります。&H0400 の番地に、&HFFを書き込めば、 画面の左隅に8ドットの棒が出ます。但し、その前に、カラーレジスタに 表示する色を書き込む必要があります。
&H0400から次々に &HFF を書き込んで行きますと、やがて画面の右端に到達します。 さらに書き込んで行きますと再び左端に戻るのですが、この時点で8ドット下に 移動します。そして2000バイト(80*25バイト)書き込むと、 横に長い線が8ドットおきに25本表示されることになります。
先頭から2000バイトを超えたところから48バイト分のダミーがあり、 続いて、先頭から2048バイト目のアドレスに書き込むと再び左上に戻りますが、 はじめより1ドット下がります。
レベル3のVRAMは、このような構造になっているため、画面消去のときには、 すべての文字が上からゆっくり消えて行くように見えます。
文字ではなかなかうまく説明できませんが、ここに用意した画面をみれば、 多少は理解しやすいのではないかと思います。

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